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CASE-056 ― ネット発祥・海外の伝承

ジェフ・ザ・キラー

まぶたがなく、裂けたように笑う白い顔の画像とともに広まった、英語圏ネット発祥の殺人鬼キャラクター。2008年に動画でキャラクターが提示され、2011年に別の作者による物語が決定版として広まった。画像自体はそれ以前から日本のサイトに存在したことが確認されている

01 ― 概要

地域アメリカ(英語圏インターネット)
起源2008年(画像自体は2005年から存在)
拡散の経路画像掲示板 / YouTube / Newgrounds / クリーピーパスタサイト / 二次創作
現況スレンダーマンと並ぶ初期クリーピーパスタの象徴的存在。画像だけが一人歩きし、二次創作のキャラクターやミームとして流通し続けている
来歴の確かさキャラクターの作者は「Sesseur」を名乗るユーザーで、2008年10月にYouTubeへ投稿した動画が起点とされる。一方、有名な白い顔の画像自体は2005年11月には日本の画像投稿サイトpya.ccに存在したことが確認されており、画像とキャラクターは別々の出自を持つ。現在最も知られる2011年の物語テキストは別の作者によるもので、誰を「原作者」と呼ぶか自体が論争になっている
テーマクリーピーパスタ、出自不明の画像、二次創作の増殖
関連する話スレンダーマン / ベン・ドラウンド(BEN Drowned)

02伝承の内容

夜、眠ろうとする人の枕元に現れ、「眠りなさい(Go to sleep)」とささやいて襲う――それがジェフ・ザ・キラーの基本像である。白くただれたような顔、まぶたがなく見開かれた目、耳元まで裂けた笑い。強烈な一枚の画像とともに、この殺人鬼の姿は英語圏のネットに広がった。

現在もっとも知られる物語版では、ジェフは引っ越してきたばかりの13歳の少年だった。不良たちとの争いのなかで漂白剤を浴びて火をつけられ、顔に大火傷を負う。退院した彼は自分の顔を「美しい」と感じ、笑みを保つために頬を切り裂き、まばたきできないようまぶたを焼いた、とされる。

しかし、この2011年の物語はキャラクターの出発点ではない。2008年、SesseurというユーザーがYouTubeに動画を投稿し、浴槽掃除中の事故で酸を浴びた男という異なる設定のジェフを提示していた。2011年版は別のユーザーが書いた「後からの決定版」で、原作者を名乗るSesseurとのあいだには著作をめぐる対立が残っている。

そして画像そのものの来歴は、さらに謎に包まれている。確認できる最古の出現は2005年11月、日本の画像投稿サイトpya.ccへの投稿であり、2007年の日本の動画にも姿が見える。長年、画像のモデルや加工前の写真を探す調査がネット上で続いているが、元の写真は今も特定されていない。

03伝播と変遷

2005年11月
有名な白い顔の画像が、日本の画像投稿サイトpya.ccに現れる(確認できる最古の出現)
2007年8月
日本の動画「NNN臨時放送」に、この画像が使われる
2008年10月
SesseurがYouTubeにジェフ・ザ・キラーの動画を投稿。Newgroundsでもキャラクターとしての活動が始まる
2011年
別の作者による物語テキストが広まり、火傷といじめを軸にした現在主流の設定が定着。「Go to sleep」の決め台詞もこの版で広まった
2015年
映画化のクラウドファンディングが行われるが、集まった資金は目標に遠く及ばず企画は停滞する
2021年
Daily Dotが画像の出自を追った調査記事を公開。2005年の日本のサイトまで遡れることを示す一方、元画像の特定には至らなかった
2026年8月
Tongalによる新たな映画化企画の開発が報じられる

バリエーション

ジェーン・ザ・キラーファンが生んだライバルキャラクター。ジェフに家族を殺された少女が復讐者として立ち上がる設定で、本編とは無関係に二次創作の側から生まれ、独自の物語群を持つ
Sesseur版ジェフ2008年の原案では、浴槽を掃除中に転んで酸を浴びた事故が変貌の原因とされ、兄弟との関係も2011年版とは異なる。現在は主流版の陰に隠れているが、原作者はこちらを正統と主張する
スクリーマー画像としての流通画像単体が、開くと大音量とともに表示される「ビックリ系」ページやコラージュ素材として、物語を知らない層にも拡散した

04確認できること・できないこと

確認できる事実

  • 有名な画像が2005年11月16日に日本の画像投稿サイトpya.ccに投稿されていたこと(英語圏メディアの検証で確認)
  • 2007年8月にYouTubeへ投稿された日本の動画「NNN臨時放送」にも、この画像が使われていたこと
  • 2008年にSesseurがYouTube動画とNewgroundsでの活動を通じて、キャラクター「ジェフ・ザ・キラー」を提示したこと
  • 現在主流の物語は2011年に別の作者によって書かれたもので、後にCreepypasta Wikiから削除され、2014年には書き直しコンテストが行われたこと

確認できない部分

  • 画像のもとになった人物・写真そのもの(長年の調査でも特定されていない)
  • 画像とキャラクターを最初に結びつけた正確な経緯(複数のユーザーが関与を主張している)

後付けとみられる脚色

  • 「画像は4chanでいじめられた女性の写真を加工したもの」というケイティ・ロビンソン説は、裏づけがなく否定されている
  • 2011年版の物語(いじめによる火傷という経緯や家族の殺害)は、2008年の原案にはない後付けの設定である
  • 画像はラテックス製マスクを着けたSesseur本人だとする主張もあるが、画像の出自をめぐる証言は食い違っている

05AI分析

社会的背景ホラー画像が通貨だった時代

2000年代後半の掲示板文化では、衝撃的な画像そのものが共有の対象であり、文脈を欠いたまま国境を越えて流通した。ジェフの画像は日本のサイトから英語圏へ渡り、そこで名前と物語を与えられた。背景には、学校や友人の間で「怖いものを見せ合う」消費のされ方があり、物語の質よりも一枚絵の強さが拡散力を決めた時代性がある。2011年版の物語が品質論争を起こしながらも広まったのは、その需要の裏返しでもある。

科学的視点画像の出自調査という営み

この伝承への関心は、物語の真偽ではなく「元画像は何か」に集中した点が特異である。調査はネット上の古い投稿や動画を遡るデジタル考古学として行われ、日本のサイトの2005年の記録が発見されるなど、検証可能な成果も生んだ。一方で、モデルの自殺説のような陰惨な出自譚は、証拠がないまま画像の不気味さを補強する脚色として機能した。分からないことが、かえって物語を増殖させる構造が見て取れる。

なぜ広まったのか名づけと物語の後追い

拡散の順序が通常と逆である。先に画像だけが数年間流通し、後から名前と物語が与えられ、さらに別の作者の物語が決定版として上書きした。誰もが設定を書き足せる開放性が二次創作の爆発を招き、ライバルキャラクターまで生んだ。原作者の主張と主流版の乖離は、ネット上の創作では「最初に作った者」より「広まった版」が正典になりやすいことを示している。2011年版が品質面で批判を受けながらも置き換わらなかった事実は、その傾向を裏づけている。

横断比較スレンダーマン、ベン・ドラウンドと

スレンダーマンもまた、2009年の画像投稿から生まれ大勢の手で設定が増やされた点で共通する。ベン・ドラウンドは作者が単独で世界を管理し続けたのに対し、ジェフは早い段階で作者の手を離れ、競合する正典が併存する状態になった。同じクリーピーパスタでも、作者が世界観を統制し続ける型と、共有財産として書き換えられ続ける型があり、ジェフは後者の典型として位置づけられる。

06出典・参考文献

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