チャーリー・チャーリー
紙と鉛筆2本で「チャーリー」を呼ぶ占い遊び。2015年にSNSで世界へ広がり、「メキシコの悪魔」という出自の脚色と、学校での禁止措置を巻き込んだ。
01 ― 概要
02伝承の内容
用意するのは紙と鉛筆2本だけである。紙に十字を引いて四つの区画を作り、「Yes」と「No」を書き入れ、1本の鉛筆の上に別の1本をバランスよく載せる。参加者は「チャーリー、チャーリー、そこにいる?」と呼びかけ、上の鉛筆が回って指した答えを、呼び出した存在の返事として読む。
呼び出される「チャーリー」は、メキシコの悪魔だと説明されることが多かった。黒と赤の目をした少年の霊、事故で死んだ少年など、姿や来歴の語られ方は投稿ごとにまちまちで、定まった伝承上の姿があったわけではない。遊びの後で怪現象が起きたという体験談の形の動画も、数多く投稿された。
前身とされるのは、スペイン語圏で子どもの間に伝わってきた鉛筆の占い遊び「フエゴ・デ・ラ・ラピセラ(鉛筆の遊び)」である。ただし、そこに「チャーリー」という名は伴っていなかったとされ、悪魔の名前や「古代メキシコの儀式」という説明は、英語圏のSNSへ渡る過程で付け足されたものとみられている。
2015年5月、ハッシュタグとともに実践動画が世界中へ広がると、学校で禁止する国が相次ぎ、宗教関係者の警告や、遊んだ生徒が病院に運ばれたという報道まで現れた。一方で専門家やメディアは早い段階から仕組みの説明を始め、鉛筆の動きは超常現象ではないという検証も、遊びと同時に広がっていった。
03伝播と変遷
バリエーション
04確認できること・できないこと
確認できる事実
- 2015年4月29日にドミニカ共和国のテレビ報道が動画サイトへ投稿され、同年5月下旬にハッシュタグ「#CharlieCharlieChallenge」が世界的に拡散したこと
- 上の鉛筆は一点でバランスする不安定な構造で、息やわずかな空気の動きでも回転すること
- メキシコの民俗に「チャーリー」という悪魔は確認できないと、BBC Mundoの記者や都市伝説研究者が指摘したこと
- フィジーなど複数国で、教育当局が学校での実施を禁止したこと
確認できない部分
- 前身の遊びがいつ、どこで始まったか。口承の子どもの遊びのため記録が残っていない
- 「チャーリー」という名がいつ付けられたか。英語圏へ渡る過程とされるが、最初に名づけた投稿は特定されていない
- 遊んだ後に怪現象が起きたという体験談の事実性
後付けとみられる脚色
- 「古代メキシコの伝統儀式」という出自は、2015年の拡散期に付けられた説明で、民俗学的な裏付けはない
- 黒と赤の目をした悪魔というチャーリーの姿は、動画の演出として後付けされたものである
- 「遊んだ500人が死亡した」という情報はパロディサイトの記事が発信源で、海外でニュースとして誤って伝えられた
05AI分析
社会的背景2015年のSNSと学校という舞台
2015年は短尺動画が拡散の主役になった時期で、「鉛筆が動く瞬間」は数秒の映像に収まる格好の題材だった。舞台が学校だったことも大きい。同調圧力の強い場では、誘いを断ることが恐怖そのものより難しい場合がある。宗教関係者や教育当局による警告は、意図に反して「大人が本気で怖がる遊び」という格付けを与え、注目をさらに集める結果になった。撮影と共有が遊びの一部になっていた点で、口伝えだけで広がった過去の学校怪談とは、拡散の形が根本から違っていた。
科学的視点鉛筆が動く仕組み
上の鉛筆は、1本の鉛筆の上で一点でバランスする不安定な構造にある。呼びかけの声や息、部屋の空気のわずかな動きでも回転しうることは、報道機関の検証でも示された。複数人で鉛筆を持ち合う前身の形については、期待が無意識の微細な動きを生む不覚筋動(観念運動)で説明でき、これは日本のこっくりさんについて19世紀末に提示された説明と同系統である。「触れていないのに動く」分だけ、こっくりさんより説明が届きにくかった点が、この遊びの特徴だった。
なぜ広まったのか道具の手軽さと「禁止」の宣伝効果
必要なのは紙と文房具だけで、誰でもすぐ再現でき、結果はYes/Noの二択で誰にでも意味が読める。動画に撮れば「動いた瞬間」が、そのまま証拠の顔をして流通する。学校での禁止措置は抑止である一方、共有される格好の「公式認定」にもなった。起源についての「メキシコの悪魔」という説明は、異国情緒という物語の燃料として機能し、真偽を確かめる検証記事自体もまた拡散の一部になった。
横断比較こっくりさん、ブラッディ・マリー
不覚筋動で説明される占いの系譜では、日本のこっくりさんの直接の海外版に近い。ただしこっくりさんは明治期の伝来から100年を超える来歴を持つのに対し、こちらは拡散から禁止、検証までが数週間で一巡した、SNS時代の速度を象徴する事例である。子どもの儀式遊びという点ではブラッディ・マリーとも重なるが、あちらが鏡の錯覚という一人の恐怖なのに対し、こちらは集団の場の同調と動画映えが核になっている。
06出典・参考文献
- Wikipedia (English) “Charlie Charlie challenge”
- BBC Trending “Where did Charlie Charlie Challenge come from?” 2015年5月26日
- The Washington Post, Caitlyn Dewey “The complete, true story of Charlie Charlie” 2015年5月26日